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自治体にSkypeが導入された!

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070125/259678/

最終回 自治体にSkypeが導入された!



 こんにちは,ゼッタテクノロジーの古田です。みなさん年末年始はいかがお過ごしでしたか?私はというと…実は最悪の年末年始でした。というのも,肩と鎖骨の関節を脱臼してしまい,病院での入院生活を送っていたのです。初めて全身麻酔をして,手術を受けました。現在はまだ金属プレートが肩に埋まっている状態です。

 10日間ほどの入院生活だったのですが,病院内でインターネットが使えない生活というのがいかに不自由かということを痛感しました。どれだけ自分にとってインターネットが身近で欠かせない存在になっていたかがよくわかったのですが,それ以上に「こんなときこそSkypeがつながれば」という思いを強く持ちました。Skypeのビデオ・チャットを使えば,簡単なお見舞いのようなことができるので,遠方の家族や友人などはとても助かるのではないでしょうか。病院の評判もきっと高まります。これを読んでさっそくどこかの病院が導入してくれると嬉しいんですが。

 個人的な話はこれくらいにして,連載の話に戻りましょう。本連載は世界規模で使われている無料のIP電話ソフト「Skype」がビジネスの世界でどう活用されているのか,われわれビジネス・ユーザーはどのように役立てていけばいいのかといった活用情報を最新ニュースと共に紹介するコラムです。

 第3回となる今回は,以下の五つの観点からお話しを進めていこうと思います。

(1)最新トピックの紹介

Skype3.0で加わったオープンチャットについて

(2)沖縄県北谷町役場の取り組み

沖縄県の小さな町がSkypeを本格導入した事例を紹介

(3)導入決定に至るまでのプロセス

担当者が何を考えたかを徹底紹介

(4)児童館と役場間の連絡にSkypeを積極活用

地域の情報発信にSkypeが一役買う

(5)まとめ

Skypeのビジネス利用におけるメリットを考察

まずはいつもと同様に,Skypeに関する最新トピックから紹介しましょう。今回は,Skype3.0から導入された新機能「オープンチャット」について紹介します。Skypeのチャット機能は,従来は招待されないと参加できないというクローズドなものでした。一方,オープンチャットは誰でも参加が可能なチャット・ルームです。主催者になりたいユーザーは,Skypeのツール・メニューの「オープンチャットを開始」を選択することでオープンチャット用の部屋(チャット・ルーム)を作成できます。

オープンチャットをビジネスでも活用

 作成したチャット・ルームは,URLの形で公開され,Webページに貼り付けたり,コンタクトリストのムード・メッセージにリンクを表示したりできます。オープンチャットに参加したいユーザーは,そのURLにアクセスすると自動的にチャットルームに入れるようになっています。

 試しに私も「オフィスデ for Skypeの質問・要望チャット」をオープンチャットとして作成してみました。弊社のWebページ上でリンクを公開していますので,興味がある人はアクセスしてみてください(<画面1>)。画面左下にチャット・ルーム入室用のリンクが貼ってあります。

画面1●オープンチャット参加用リンク(画面左下)

 なお,当然ですがアクセスする前にSkypeを3.0にバージョンアップしておく必要があります。また,チャット・ルームには主催者がオンラインのときしか入れません。こうした若干の制約はありますが,実際に使ってみるととても面白い機能です。「オープン」とは言うものの,閲覧や書き込めるユーザーを制限したりもできるので,遊びではなくビジネスにも活用できます。

 上の例のように,Webページにリンクを貼っておけば,メールよりも気軽にユーザーからの意見を聞くことができます。ユーザー・サポートや製品開発のフィードバックなどが主な使い方になるかと思いますが,ほかにどんなアイデアが出てくるか今後の発展が楽しみな機能です。



本題に入りましょう。今回はいきなりネタばらしをしてしまいますが,なんとある地方自治体でのSkype導入事例を実名で紹介します。どちらかというとお固いイメージがある自治体がSkypeを導入したんですよ。しかも,ちょっとテストをしてみたなどというレベルではなく,ちゃんと業務で使っているんです。これはかなりのインパクトではないでしょうか。この事例紹介をきっかけに,今後,ほかの地方自治体でもSkypeの導入が増えるのではないかと考えています。

Skype導入で住民サービスの質を向上させる

 地方自治体は,地方交付税が年々減っていく中で,厳しい財政状況のところが少なくありません。しかしながら,民間企業と異なり,リストラなどによる思い切ったコスト削減が難しいという事情があります。このため,(1)毎月のランニング・コストを抑える,(2)同じコストでより効率の良い住民サービスを行う,(3)地域の生活環境や住民サービスを改善し,住民を増やして税収をアップする,(4)海外や外部からの観光客をもっと呼び込み,税収をアップする――といった地道な努力によって,税収を増やしたりサービスのコスト・パフォーマンスを高めることが求められています。

 支出を減らす,収入を増やす,質を向上させるという三本柱のうち,Skypeの導入が大きく関係するのが支出を減らすという部分です。これは当然ですね。Skypeを導入することで,組織内の通話にかかる費用を削減できるからです。拠点間で外線を使って通話していた場合は通話料が0円になりますし,拠点同士を専用線で結んで内線網を構築している場合なら,その利用料を削減可能です。

 しかし,このコスト削減以上に見えない形で効果があるのが,三つ目の柱である「質の向上」ではないかと思います。例えば,今まで本庁に出向かないと解決できなかった事案が,出張所からSkypeビデオを使って会議をして解決できるようになったり,観光案内所からSkypeを使った無料通話でホテルの予約をできるようにしたり,海外の旅行客の通訳を行うといったことがSkypeの導入によって可能になります。今までやりたかったけれども費用面で断念していたことが,簡単に実現できるようになるのです。今回紹介する事例は,まさにこのような住民サービスの向上への取り組みを主目的としてSkypeの導入を決めたある自治体の事例です。

沖縄県北谷町役場の取り組み

写真1●沖縄県北谷町役場

 舞台は,メンソーレでおなじみの沖縄県は北谷町にある北谷町役場(<写真1>)です。場所は,那覇空港の北,車で20~30分ほどのところにあります。周りには宜野湾市や嘉手納町という有名な自治体がありますが,北谷町も海がとてもきれいなことで有名な町です。人口は2万6905人,公示面積は13.63平方キロメートルという比較的小さな自治体ですが,なんと管理をしている施設は町内に59カ所もあります。図書館や児童館,公民館,小中学校など多くの施設を管理しています。

 これらの施設は,すべて「地域イントラネット」でつながっており,役場からインターネットにアクセスする環境になっています(<図1>)。地域イントラネット内の各拠点は100Mビット/秒の光回線で結ばれ,役場から先は10Mビット/秒の専用線でインターネットにつながっています。このように北谷町は小さな地方自治体としてはネット環境が非常によく整備されており,これをもっと有効活用する手段を模索していたということでした。

図1●北谷町役場を中心とした地域イントラネットの全体構成

[画像のクリックで拡大表示]

 [2007/01/30

当初は,このイントラ網を使って,IP電話の導入を検討したそうですが,予算的に折り合わず一度は断念せざるを得なかったということです。転機が訪れたのが2005年夏のことです。Skypeの存在を知ったのです。無料で使えて,音質も優れるという評判のソフトがあるらしいということで,役場ではさっそくSkypeの調査に乗り出しました。

担当者が音質の良さに惚れ込んだ

写真2●北谷町役場・情報政策課のメンバー

左から豊里氏,多和田氏,伊波氏

 具体的に,Skypeの利用を検討し始めたのは,情報政策課のメンバーです(<写真2>)。情報政策課は,一般の企業でいうところの情報システム部門に相当する部署です。Skypeを評価した担当者は,「携帯電話はもちろん,一般電話よりも音質が良いのではないか」とまずその音質の良さに驚き,これはいいぞと惚れ込んだそうです。

 次いで担当者は,ネットワークの設定変更などが必要なく,簡単にファイアウォールやルーター越しに接続できて利用できるという接続性の良さや,優れた操作性に感心しました。これなら違和感なく,子供からお年寄りまで誰もが使えるのではないか。そう感じた担当者は,すぐに「これは本当にいいですよ」と上司に報告しました。

 しかしながら,Skypeを取り巻く環境やそのしくみなどを調べていくうちに,利用にあたっては大きな壁があることにも気が付きました。Skypeが高度に暗号化されていて,盗聴や漏えいの心配がないことはわかったのですが,誤操作による情報漏えいの問題や,内線通話以外の私的な利用に歯止めをかけられず,証拠の保全という意味での通話記録の集中管理などもできない。P2Pソフトの一般的な弱点であるログ管理ができないことや,個人ユーザー向けソフト特有の管理機能のなさが大きな問題になってしまったのです。「やはりそのまま使うのは危険なのではないか」。

 自治体としては,これらの問題はとても大きな壁と言えました。今のご時世,情報漏えいや私的利用の禁止を確実に行えないと自治体への導入は難しいからです。いかに便利なツールであっても,安全性を確保できないのであれば導入などできません。担当者によれば,一度断念しようかと考えたところ,インターネットで当社のオフィスデforSkypeをたまたま見つけ,これを試してみようかということになったそうです。このソフトを使えば,課題であるログ管理や個別の機能制御が実現できるのではないか。そう考えた担当者から連絡が入り,我々と北谷町役場との接点が生まれたというわけです。

 当社としても初めての自治体案件であり,果たしてうまくいくのかという不安は正直ありました。しかし,現場の担当者の強い意志によってそうした不安などすぐに吹き飛びました。IT技術はとかく人間関係を冷たくする方向に向きがちだ。でもITが本来目指すものはそういうものではないはず。Skypeを使って,もっと人間関係をホットにしたい!――。役場の担当者と当社のエンジニアがタッグを組み,熱い思いでプロジェクトを進めていったのです。

 その後,順調に評価が進み,役場が考える運用ポリシーに対して十分な機能を当社のソフトが提供できるという評価をいただき,Skypeの導入が決定されたのでした。

 あとから聞いた話ですが,やはりSkype用の管理ツールがなければ導入は難しかっただろうということです。余談ですが,このときSkypeの良さを知った役場の係長は,大学進学で県を離れる娘さんにSkypeを教えたそうです。そして今では,毎日1時間以上Skypeで連絡を取り合っているとのこと。一人暮らしを初めたばかりで不安一杯な娘と心配でたまらない親をIT技術がつなぐ――。あらためてSkypeは素晴らしいツールだなと思います。

 さらに余談ですが,この係長のところに,ある日突然県の職員から電話がかかってきたそうです。何だろうと不安気に電話に出たところ,その職員はこう言ったそうです。「○○ちゃん(係長の娘さん)の友達の父親ですが,無料の電話があると聞いたのですが詳細を教えてください!うちも娘との通話にかかる費用が…」。Skypeはこんな形でいろいろな出会いを人々にもたらし,コミュニケーションの輪を広げていくようです。

 [2007/01/30

地域の活性化に一役買う

 少々脱線してしまいました。さて,なぜこのように北谷町役場は熱い思いでSkype導入を推進したのでしょうか。ここからは導入に至るまでの思いや利用目的についてお話したいと思います。今回のSkype導入は,実は総務省の「地域イントラネット基盤施設整備事業」の採択があり,実施が可能になったということです。つまり,コスト削減ではなく,地域の情報発信や情報格差をなくすための取り組みとして,Skypeを導入して活用していくというのが第一の目的だったそうです。

 例えば次のようなことに活用しているそうです。まずは児童館での活用法です。これは実際,私も現場を回って見せてもらいました。児童館では,イベントや行事がたくさんあります。その内容を地域住民の方にどんどん告知して,地域を活性化させたいという強い思いが役場にはあったということです。

 しかし,従来のように役場主導の情報発信では限界がありました。Webページの更新さえなかなかできず,情報発信が常に足りていない,情報発信がタイムリーに行えないという問題がありました。そこで今回,総務省の整備事業で,地域からの情報発信を積極的に行うことへのトライが決まりました。各児童館がWebページを持ち,児童館の職員の手で更新作業をしていこうという画期的な取り組みがスタートしたのです。

写真3●役場でのSkype利用の様子

 ところが,児童館の職員がすべてパソコンに明るいかというと決してそうではありません。そういった職員が情報発信を滞りなく行うためには,サポートが必要になります。そこでSkypeです。情報政策課では,Skypeを使って児童館のWebページ作成支援を行うことにしました。こうすることで時間を気にせず,Webページの作成でわからないことを相談し合いながら,情報発信のための基盤作りができたということです(<写真3>)。パソコンを操作しながらわからないことがあれば,その場でパソコンを使って通話できるという簡単なことなのですが,それが本当に簡単にできることがもたらす劇的なメリットを実際に現場で見せてもらいました。

 職員は,操作していて何かわからないことがあったらハンドセットを持ち上げます。するとSkypeが自動的にアクティブになります。そこからかけたい相手を選んで通話ボタンを押すだけです。使っているハンドセット「サイバースピーカーW」は,ドライバ・ソフトが良くできていて,ハンドセットを持ち上げたり降ろしたりするのに連動して通話状態になったり切断できるようになっています。またハンドセットに付いているボタンを使って電話ライクに操作できるのも特徴です。

 最近ではヘッドセットに慣れている人も多いと思いますが,やはりパソコンに慣れていない人やお年寄りなどには操作感が電話と似通っているハンドセットを使うことがSkypeのスムーズな導入と利用につながるのだなと感じました。

写真4●児童館でのSkype利用の様子

 こうした使い方では,パソコンの操作に慣れてしまうと,あとはあまりSkypeを使わなくなるのではとちょっと心配しましたがそれは杞憂でした。これをきっかけに今ではプリンタの調子が悪いといったIT関連のトラブル相談を中心に,児童館と情報政策課の間でSkypeを使ってちょくちょく連絡を取り合うようになっているそうです。今後はさらに日々のコミュニケーション用途にも利用が進んでいくのではないでしょうか(<写真4>)。

 また,児童館と役場だけではなく,児童館同士やほかの自治会などとの打ち合わせにも幅広く活用していけるのではないかと思います。今回,私が訪れた児童館には子供たちが20人以上いて,館内で力いっぱい遊んでいました。これだけの子供たちがいれば,保護者からの問い合わせ電話なども多いでしょう。にもかかわらず,この児童館では電話回線は1回線しかないということで,もし情報政策課とのやり取りで電話回線を占有してしまっていたら,いつ電話してもつながらないと耳の痛いクレームが日々役場に飛びこんでくることになっていただろうなと思いました。

 [2007/01/30

地域の公民館でも,同じようにSkypeが活用されています。地域の自治会での連絡事項やイベント告知などを,自治会のWebを作成して情報発信していこうと取り組みを始めたということですが,自治会の自治会長なども今ではSkypeを十分に活用し,地域とのコミュニケーションをとり始めたそうです。

「10円損した」と自治会長が怒る

 担当者からは,こんなエピソードも聞かせてもらいました。この地域では落雷被害が多いそうで,ちょうど訪問をした数週間前にも,落雷のために公民館の一部でパソコンがネットワークに接続できない現象が発生したということです。原因はLANアダプタが落雷で壊れてしまったためでした。

 すると,すぐに公民館にいた自治会長から「Skypeが使えないよ!」と電話連絡がありました。第一声がこの言葉だったことに電話を受けた役場の担当者は驚いたそうです。Webアクセスやメールではなく,Skypeが使えないことに最も困っているというのですから。担当者が事情をヒアリングして調査する旨を伝えたところ,自治会長は「これで10円は損してるんだから,早く直してよね」と言葉を残し電話を切ったそうです。

 Skypeがこれほど生活に欠かせないものになっているという話を聞いて私も驚きました。Skypeを活用し,時間を気にせず話せるようになることが,どれほど地域のコミュニケーションに貢献するかを示す貴重な証言と言えるでしょう。

最後に

 3回にわたって,Skypeの企業や自治体での導入事例や活用法を紹介してきました。どの事例もまだ導入してから間もないものばかりですが,すでに確実に効果が出ている部分があります。すべての事例で共通しているのは,Skypeの持つ利点を,積極的に企業活動や住民サービスに生かしていこうという,より前向きな姿勢になったということです。

 新しいサービスに出会ったとき,いくら便利だからといっていきなり飛びつくのは確かに危険です。そういう意味ではこれまでSkypeのビジネス利用があまり進まなかったことは当然と言えるでしょう。しかし,世の中に登場して3年以上が経過し,その間のべ何億以上もの人に使われてきたSkypeは,もはや安全性を心配することは必要ないと断言できます。

 Skypeは,今後ビジネスの世界でも大きく活用の場を広げていくと確信しています。世界規模ではもちろん,日本国内だけみてもこれだけユーザー数が増えてくると,Webやメールと並ぶ新しい基盤サービスとしてすべてのビジネス・ユーザーがそろそろ無関心ではいられなくなくなりつつあると思います。

 本連載は今回で最終回となりますが,機会があれば,この続きとして新たな導入事例や活用法をぜひリポートしたいと思います。ぜひまたお会いしましょう。


古田 恵一

ゼッタテクノロジー BI事業部 マネージャ

企業ユーザー向けのSkype管理ツール「オフィスデ for Skype」などを販売しているゼッタテクノロジーに所属。豊富な知識を基に製品開発に深く携わっているほか,国内におけるSkypeのビジネス利用での普及を目指し,コミュニティ活動などにも積極的に参加。Skype関連イベントでの講演もこなすなど多忙な日々を送っている。

 [2007/01/30

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