これなら日本のテレビ局も受け入れられる「JOOST」
スカイプの創業者が立ち上げた新しい動画配信サービス「JOOST(ジュースト)」の本格運用が始まった。JOOSTはP2P技術をベースにこれまで存在していた技術や機能をうまくまとめ上げたビデオ・オン・デマンドサービスだ。テレビ局にとって変える必要のないビジネスモデルは変えておらず、局側から連携しやすいという点で「YouTube」など他の動画サービスを一歩リードしているようだ。(江口靖二)
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITel000023052007
JOOSTを利用するには無料の専用ソフトをダウンロードする必要がある。機能はそれぞれ決して新しいものではないが、トータルで非常にバランス良く組み合わされている。いくつか特徴があるが、第一に挙げられるのは画質のよさだ。
JOOSTはネット接続されたパソコン同士で直接情報をやりとりするP2Pの技術を利用している。何かと悪い印象ばかりが付きまといがちなP2Pであるが、大規模なサーバーが不要になるなど技術そのものは優れており、JOOSTはこういった動画配信ものとしては非常に高画質を実現している。私の自宅のPCは32インチモニターに接続しているがフルスクリーンでの視聴にも堪えられるレベルと言ってもいい。
■RSSリーダーで「ながら視聴」も
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半透明に表示されるRSSリーダーやチャット画面
もともとテレビは視聴者にとって「ながら視聴」が魅力であった。JOOSTにはRSSリーダーが組み込まれていて、これを画面上に半透明で重ねて表示できる。RSSで配信されているニュースやお気に入りのブログ、話題のミニブログ「twitter」の更新状況なども刻々と表示させられる。
テレビ局側はこれを利用しておすすめ番組情報や関連コマースに利用することができ、これまで以上にテレビ画面に対して密着度の高い「ながら視聴」の実現が可能だ。テレビ関係者は「画面を汚す」などと言っている場合ではない。むしろ不必要な字幕スーパーで自ら画面を汚していることを反省し視聴者にこれを明け渡すべきだ。ニコニコ動画もこの点が受けているに違いない。
それ以外の特徴も挙げていこう。
・専用アプリが必要
これは犠牲になる点もあるが、JOOSTではメリットのほうが多い。特に公式コンテンツとして著作物を扱う場合において管理がしやすく権利者の理解も得やすい。YouTubeとはこの点で対極にある。YouTubeにおけるメリットはブログにどんどん貼り付けて面白い番組を人に知らせられることだが、困ったことにテレビ局にはここが許し難い。
・視聴制限機能
原権利者を守ると言うよりは、たとえば日本国内ですでに誰かがCS放送やIPTVで配信の権利を有している場合にそれを保護するという部分が大きいようだ。現時点ではいわゆるアダルトコンテンツは配信されていないが年齢認証機能も一応ある。
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お気に入りを登録できるマイチャンネル
・レコメンド
5つの星の数で番組を採点することができる。シンプルだが視聴率だけではない有効なコンテンツ評価指標となる。同時に、こうしたランキングは普遍的な番組宣伝ツールである。当然だが視聴ログは正確に収集できるはずだ。
・優れたユーザーインターフェイス
それなりのPCスペックを要求するが、デザイン的にも動作的にも軽快で使いやすい。あくまでもPCベースなのでリモコンではなくマウスやキーボードによる操作が前提となっており、ここはテレビとは大きく異なる。
・チャットやメッセンジャー
これもまた「ながら視聴」にもってこいの機能で、同じチャンネルを見ているもの同士による番組チャットができる(といっても番組そのものはオンデマンドで配信されているので同時に同じ画面を見ながらというわけにはいかないが)。またGoogleTalkとの連携によるインスタントメッセージで会話ができる。こうした視聴者同士のコミュニケーションツールがデザイン的にもスマートに用意されているので、テレビ局側のお題の設定次第で魅力的な場に仕立て上げることができる。
■公式コンテンツと広告
これまで挙げてきた特徴はどちらかといえばユーザー側のメリットが多い。しかしこれだけではなくJOOSTの最大の特徴は「コンテンツホルダーによる公式コンテンツ」であることと「広告モデル」という点にある。
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JOOSTのコンテンツ再生画面
テレビ局側から見るとYouTubeのような動画共有サービスは2つの点で許容しがたい。1つは公式コンテンツを出していくにはオープンすぎると感じる点。アダルト系ブログにタレントの出演シーンをどんどん張られては困るのだ。もう1つはCGMという素人の台頭そのものが自らを脅かすのではないかという危機感だ。今のところ何の脅威でもないが、将来にわたっての本能的な不快感である。
JOOSTが広告モデルというのももちろん重要な点だ。テレビ局があくまでも広告モデルにこだわるのは50年間かけて培ってきたものを破壊するのは勇気が必要なのと、有料放送モデルの市場が期待するほど大きくないことを十分に経験してきたからである。
■変える必要がないビジネスモデルは変えない
つまりJOOSTは大手広告主の資金によって支えられた良質のコンテンツの制作配信という既存のテレビのビジネスモデルを最初からそのままネットに持ち込もうとしているのである。YouTubeやClip+Slingがテレビ局との連携を模索するなかで、JOOSTはコカコーラ、P&G、ナイキなどの大手の広告主や米バイアコム傘下のCBSやMTVなどの既存のテレビプレーヤーを着実に取り込んでいる。
テレビは本当によくできたビジネスモデルだ。それを根底から無理に変える必要はない。必要な機能を取り込めばよいのであってJOOSTは現実的なテレビの未来であるといえよう。
言葉でいくら説明するよりも百聞は一見にしかず。JOOSTは現在のところ招待制になっているが、テレビ関係者にこそ是非とも試してみてほしいサービスだ。JOOST的なものならどうにか使えると感じるのではないだろうか。