無線周波数帯の入札、新市場の創造も
ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米政府による無線周波数帯の競売が近づいている。通信会社による携帯電話・ブロードバンド市場の支配を弱める戦いで、米グーグル(Nasdaq:GOOG)などハイテク企業が初めて大きな勝利を収める可能性がある。
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米連邦通信委員会(FCC)の規則草案は、利用可能な周波数帯の一部を「オープン」ネットワークの構築向けとし、通常ではAT&T(NYSE:T)やベライゾン・コミュニケーションズ(NYSE:VZ)のような大手通信会社が課す制限を設けていない。入札にかけられる周波数帯は150億ドルを国庫にもたらすと推定されている。新しいオープンアクセス規則が適用される周波数帯は、全米ネットワークを構築するのに十分な規模。
グーグル、衛星テレビ会社、あるいは新規参入を目指す他の会社が応札して携帯電話市場に参入し、大手通信会社と競合する可能性がある。グーグルは、FCCに提出した多くの書類と9日夜の書簡で、一部の周波数帯をオープンネットワーク枠にする必要があると主張。米インターネット競売大手イーベイ(Nasdaq:EBAY)傘下のスカイプも、そうした規則を支持する書類を提出した。
グーグルの考え方について詳しい筋によると、同社は周波数帯の取得とネットワークの構築・運営の外部委託という構想を検討していたものの、実際に新しい無線ネットワークの構築・運営に数十億ドルを費やす用意があるかどうかは不透明。別の筋は、グーグルはこうした取り組みを中核事業外のものとみなしているため、現時点では同社が周波数帯に直接応札するとは考えにくい、との見方を示した。
グーグル、スカイプなどハイテク各社は、通信大手がモバイル機器やソフトウエア、サービスをコントロールし、携帯電話機を特定の会社に「固定する」ことで技術革新が抑制される、と主張。例えば、AT&Tはアップルの新型携帯電話機「iPhone」の展開について独占契約を結んでいる。インターネット企業は、無料のインターネット通話などのサービスを携帯電話市場に導入する上で困難に直面している。一方、ノキア(NYSE:NOK)など携帯電話機メーカーは、欧州での人気機種の米国への導入に苦心している。米国では、通信会社が自社のネットワークで利用される端末を決定するからだ。
AT&Tとベライゾンは、入札規則の草案は不必要である上、グーグルの事業モデルに沿うよう作成されており、両社をこの周波数帯の入札から遠ざけるためのものだ、と主張している。
FCCのケビン・マーティン委員長はインタビューで、規則草案は、携帯電話の製品・サービスを市場に出す端末メーカーやその他ハイテク企業による革新を促進するものだ、と語った。また、高速無線LAN(構内通信網)接続技術「Wi-Fi(ワイファイ)」に対応する携帯電話の米国での展開が遅れていることを引き合いに出し「消費者は、こうした機能から大いに恩恵を受けると思う」と述べた。
FCCの当初規則は、数週間以内に議論の上、採決される。採決日時は設定されていないが、最終的な競売規則の土台になるとみられる。一部の携帯電話業界の起業家や消費者擁護団体には、規則草案は、新しい通信業者がオープンネットワークで携帯電話市場に参入できることを確実にするには十分でない、との声もある。
ベライゾンは、同社の無線・固定通信ネットワークの運営方法に関するいかなる制限にも激しく反対してきた。通信各社は政府への働きかけを行う強力なロビー組織を持っており、最近行った一連の合併により、その影響力も増大した。
ベライゾンとAT&Tは昨年、通信会社が競合他社のインターネット通信速度を据え置きながら、自社あるいは特定の提携先の通信速度だけを引き上げることを阻止する法案を廃案に追い込むのに成功した。
いわゆる「ネットの中立性」の支持者は、こうした優遇措置を禁止したい考え。ネットの中立性とは、通信会社やケーブルネットワーク保有者は、消費者がどのようにインターネットを使うかを強制してはならず、コンテンツ(情報の内容)の発信元にかかわりなく、いかなるコンテンツも差別してはならない、とする概念。
ベライゾンとAT&Tは2週間前、連邦取引委員会(FTC)が170ページのリポートの中で、こうした「ネットの中立性」に関する規制は不必要、との判断を示した際にも得点を挙げている。
今回の競売によって、ネットの中立性に関する議論の土俵は携帯電話業界に移った。米通信各社は、幾重にもおよぶ支配力を行使している。かつてヤフー(Nasdaq:YHOO)のモバイルグループを率い、通信会社に勤務経験のあるダグ・ガーランド氏は「素晴らしい製品を開発することはできるが、その流通にこぎつけるのは大きな問題だ」と語った。
携帯電話サービス会社は、FCCが定期的に実施する競売を通じて、公共の電波(無線周波数帯)へのアクセス権をリースする必要がある。次回の競売で対象となるのは、2009年2月までに新しいデジタル信号への切り替えが法律で義務付けられたテレビ局が使用しなくなった周波数帯。この周波数帯が特にブロードバンド通信に適しているため、競売には多大な関心が寄せられている。
インテル(Nasdaq:INTC)、ヤフー、イーベイなどのハイテク企業は、この周波数帯を新規参入企業が獲得することを望んでいる。実際、グーグルを含む数社は、新規参入組は既存の通信会社に比べ、一層多様なアプリケーションとモバイル機器にネットワークを開放するとFCCが明確に指定するべきだ、と主張するところまで踏み込んだ。公表されていないFCCの草案では、入札に掛けられる周波数帯の約3分の1がこうした要求に対応する見込み。AT&T、ベライゾンなど通信会社の応札は禁じられていないものの、付属の「ひも」が入札対象のうまみを大幅に減らしそうだ。
通信業界の政策展開について機関投資家への助言を行うスタンフォード・グループのアナリスト、ポール・ギャラント氏は「ネットの中立性という課題について、これは今後数年でも最もよい糸口になるだろう」とコメントした。