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iTunesやSkypeの成功からゲイツ氏引退の理由が見える−西 和彦氏インタビュー
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投稿者 上野みのる 日時 2006 年 7 月 18 日 12:16:34:

スカイプが新しいビジネスで勝ちを収めているという話です。

米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウエアアーキテクトの引退表明は、業界に少なからぬ衝撃を与えた(関連記事)。唐突にも思えるこの発表の裏にはどんな事情が隠されているのか。ゲイツ氏と古くから親交のある、元アスキー社長で、現在ITNY代表取締役マネージング・ディレクターを務める西 和彦氏に聞いた。

■ビル・ゲイツ氏引退の理由をどう見るか。
 発表では慈善活動に専念したいとあったが、必ずしもそれだけではないのではないか。私は、彼はマイクロソフトのトップでいることに情熱を感じなくなったのではないかと想像している。

 ゲイツ氏は、これまでことごとく勝利を収めてきた。OSではデジタル・リサーチを、表計算ソフトではロータスを、ワープロではワードパーフェクトと日本ではジャストシステムを、ブラウザーではネットスケープをしのいでここまで来た。

 ところがこのところマイクロソフトは、勝ちから見放されている。Windowsや「Office」から多大な収益は得ているが、それ以外の新しいビジネスは必ずしもうまくいっていない。さらに、Linuxやグーグル、アップルの「iPod」、オラクルなどすんなりとは勝てない厄介な競争相手が増えている。大きなパラダイムシフトが起こっている中で、自分はできなかったことに気がついたのではないか。

 また、ゲイツ氏一人が引退したとしても、マイクロソフトにはそれほど大きな影響がなくなった、ということでもある。だからマイクロソフトとしても承諾せざるを得なかったのだろう。

■なぜマイクロソフトは勝てなくなったのか。
 新しいソフトウエアの波にうまく乗れなかったからだ。マイクロソフトが成功を収めた、スタンドアロンのクライアントソフトを販売するというモデルは破綻しつつある。iTunesや「Skype」「Google Earth」などの成功を見れば、それがよく分かる。

 ソフトウエアの新しい形として「Web 2.0」という言葉がもてはやされているが、この言葉はどこか的外れだ。重要なのは「Web」ではなく「ネット」である。IPネットワークにつながる無償のクライアントソフトと、その背後にある大規模な分散データベースシステム。これこそがこれからのソフトウエアのモデルだと言っていい。iTunes、Skype、Google Earthに共通するのはこの点なのだ。Webブラウザーではなく専用のソフトウエアを使い、そこから送られてくるリクエストを自社の分散データベースで処理している。

 マイクロソフトは創業以来、パソコンをすべての中心に置いてきた。パソコンの性能をフルに使うクライアントソフトを開発、販売してきた。このビジネスモデルが大成功を収めたあまり、クライアントソフトと分散データベースから成るソフトウエアの構築には出遅れたということだろう。

 ただ、その責任はゲイツ氏というより、従来のビジネスモデルを変えることに対して保守的だった上層部の幹部にあると言えるだろう。マイクロソフトに限らず、今の自分を変えるというのは大変なことだ。

 もちろんマイクロソフトにも、巻き返しの可能性はある。例えばマイクロソフトがOSやアプリケーションソフトを自社のサーバーでホスティングし、ユーザーが端末からアクセスしてそれを利用するというビジネスはあり得るのではないか。その片鱗は、Windows LiveやOffice Liveなどの新規サービスに既に見られる。ただ、ネットワーク経由でソフトウエアを提供するとなると、ユーザーが作成したデータの機密保護など難しい問題を解決する必要はある。

■正念場にあるマイクロソフトのかじ取りを任されたレイ・オジー氏。彼をどう評価するか。
 この4月にゲイツ氏に会ったときに「レイ・オジーを知ってるか」と聞かれた。「Notesを作った人とは知っているが、よくは知らない」と答えると、「いいヤツだから一度会ってやってくれ」と言われた。彼がそんな発言をするのは、非常に珍しい。だからそのとき私は、これは彼を後継者にするつもりだということなのだろう、と思った。

 ゲイツ氏がパソコン型の技術者なのに対して、オジー氏はネットワーク型の技術者だ。Lotus Notesを生み出すなど、過去の経歴を見てもそれは明らかだ。彼なら、うまくやればマイクロソフトの業績をさらに伸ばすことができるかもしれない。ただし、同社が手がける多彩な事業すべてで十分な成果を上げるのは非常に困難な仕事だろう。まずは、お手並み拝見といったところだ。

■ところで、引退後のゲイツ氏はどんな人生を送るだろうか。
 彼の頭の中には、IBMを創業したトーマス・ワトソン氏のイメージがあるのだろう。だから一時代を築き、勇退後は社会貢献活動に生きるというのは考えられることだ。ただ、ゲイツ氏の場合は、それだけでは終わらないようにも思う。

 私は、彼は政治の世界に身を投じてもよいのではないかと思う。大統領選挙に副大統領として出馬してみるなんて、可能性のあるシナリオだろうと思っている。

(仙田 明広,八木 玲子=日経パソコン)
[2006/06/22]

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